懐かしのアーケードゲームの基板コレクションの紹介です。
ゲーム基板を集め始めたのは、「ゼビウス」を入手してからです。名作ゲームの本物をいつでも楽しむ事が出来る喜びと安心感は、 他の手段では実現できません。以来、アーケードゲーム創世期の名作をこつこつ集めました。 最近はプレミアが付き、高額になりつつありますが、手頃な値段の時に購入できたのは、ラッキーだったのかもしれません。
「懐かしのゲームを楽しみたい」と思っている方には、ゲーム基板にチャレンジする価値はあるのではないでしょうか?多少ハードの知識や技術は必要ですが、基板の配線方法、筐体(テーブル型)のオーバーホール記録も掲載します。
実際にゲーム基板を動作させるには、基板から筐体へ接続する「中間ハーネス【写真1】」を作成します。このハーネスを接続することにより、基板毎に異なる端子規格を、筐体側(筆者所有のものはタイトー式、36ピン メスコネクタ【写真2】)に合わせる事ができます。
筐体側(36ピン メス)の配線は下図の様になっています。この筐体側メス端子に挿せる「36ピン オス」基板【写真3】とゲーム基板(固有配列【写真4】)の対応する端子同士を0.18sq〜0.3sq程度の導線(ビニール線、以下同様)で配線して中間ハーネスを作成します。GNDと電源関係は、電流が大きいので0.5sq〜0.75sq程度の導線を使用するようにします。
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実際にゲーム基板を動作させるには、電源やジョイスティック、スタートボタンや攻撃ボタンなどを接続する必要があります。最近はコントロールボックスという、ゲーム基板の動作に必要な機器を組み込んだ専用の装置も市販されているので、これらを利用するのが一般的でしょう。
しかし、アーケードゲームの醍醐味は、やはり「本物の」筐体(ジョイスティック、ボタン、画面)でプレイすることではないでしょうか。筆者は、最初に「ゼビウス」を入手した時に、本物のテーブル型筐体を25,000円で購入しました。業務用に使用されていた筐体でしたので、痛みも結構ありました。そこで、電源ライン等の再配線、ブラウン管駆動基板の汚れ(ホコリ)の洗浄/調整、スピーカー/冷却ファン等部品の交換、一部外観の再塗装を行ないました。ここでは、オーバーホール箇所と整備方法の解説をします。
購入時の状態は、+12Vと+5Vは電源ユニットから筐体側メスコネクタに直接配線されていましたが、-5Vだけは別の端子から空中配線されていました。このままでは接触不良による電圧降下や、不意の接触により断線してしまう心配がありましたので、他の電源ラインと同じように配線し直し、クランプで留めました。
電源ラインの配線には、中間ハーネスと同様に太目の導線を使用します。太目の導線は、自動車用品店の電装品コーナーで、太さ0.75sq〜1.25sq程度のものが入手できますので、利用しても良いでしょう。
筐体購入時に付いていたスピーカーは、コネクタ配線の精度の悪さから、電源ラインとショートしてしまい焼き切れてしまいました。そこで、配線の整理と同時に同様なタイプと交換し、ついでにスピーカー出力調整用のボリュームをつけました。
今回交換したスピーカーは「8Ω15W」のものですが、極端に小さいものや大きいものでない限り問題ないようです。
ジョイスティックとプッシュボタンも交換しました。交換するプッシュボタンは、業務用のものが専門店で入手できます。見た目の新しさと同時にカラフルになり、古い筐体が少しは新鮮に見えるようになります。機能的には接触不良が無くなり、ボタンを押した時の反応が良くなります。
ボタンは消耗品と考え、予備部品をストックしておくと良いでしょう。また、ボタン交換時に配線をハンダ付けし直さなくて良いように、配線側にカーオーディオ用「110スピーカー端子」を付けておきました。
ジョイスティックはゲームの操作性に影響しますので、ここでは4方向⇔8方向切り替え可能なタイプと交換しました。入手したのは、ミスタージョイスティック「JL-W」です。このモデルは、切り替え時に工具が必要ありませんのでお勧めです。
パックマンやディグダグの時は4方向、スクランブルやゼビウスのときは8方向に切り替えないとうまく操作できませんので、切り替えタイプへの交換は必須です。
その他、筐体下部に冷却用のファンがありますが、回転音が大きく汚れもあったので交換しました。この筐体のFANは、12cm角100Vのタイプでしたので、同型のFANと交換しました。交換後は、回転音が静かになりプレイに集中できるようになります。
画面の調整を行う前に、駆動基板がホコリだらけで汚かったので清掃する事にしました。最初にエアーでホコリを吹き飛ばし、その後基板自体の洗浄を行いました。
基板を洗浄するには、専用の洗浄剤(スプレー)を使用します。今回は基板洗浄用の専用品(サンハヤト ハイシャワーDS-216)を使用しましたが、入手性に優れる「KURE エレクトロニッククリーナー」を使用しても良いでしょう。
駆動基板の洗浄が終わったら、良く乾かしてから筐体に戻します。
ブラウン管の宿命として「ピンボケ」があります。ピンボケの原因は主に経年変化によるコンデンサの容量減少が考えられますが、ここでは、ブラウン管の高圧コイルを調整してピントを合わせてみます。
ブラウン管駆動基板にある高圧コイルに付いている可変抵抗器を絶縁ドライバなどで少しづつ回してみます。左右どちらかにまわすと、ピントが合ってきますので、最もピントが合う位置まで回して調整します。
画面の色の調整ですが、購入した筐体には「RGB DRIVE」という可変抵抗器がありましたので、好みの色合いになるよう調整します。
また、基板によっては同期が合わず画面が流れたり乱れて表示されなくなる事があります。この場合は「V.HOLD (垂直同期)」を調整する事により画面が表示されるようになります。
筐体のオーバーホールをする場合に、可能な限り部品毎にバラして作業しますが、表面が劣化した部品は再塗装してリフレッシュさせました。
筐体の本体上部の木部は劣化も少なく細かい傷の修正程度に収めましたが、本体下部の金属部分はサビによる劣化が目立ちましたので再塗装を行いました。
脚部は本来クロームメッキされているのですが、経年変化でサビが出ており、全体に輝きが無くなっていました。本当は業者に依頼して再メッキをすれば良いのですが、そこまでお金を掛けられませんので、今回はシルバー色で塗装を行いました。
塗装の前には十分に汚れやサビを落とし、塗料の密着性を良くするためにサーフェーサを下塗りしておきます。使用する塗料は、強度/値段/入手性共に優れる、自動車ボディー補修用の「ソフト99 ボデーペン」シリーズがお勧めです。
本体下部の金属筐体は黒塗装処理されていますが、ここにもサビが発生しており修正する事にしました。
ここで使用する塗料は、脚部と同じ「ボデーペン」でも良いのですが、サーフェーサ不要でサビに強く密着性にも優れる「シャーシブラック」を使用しました。塗装前には、サビを落とすためにペーパー掛けしますが、なるべく既存の塗装を残し下地(金属部分)が出ないよう表面を整えておきます。塗装時には、面毎に分けて作業すると仕上がりがキレイになります。
コントロールパネル部は、オリジナルの印刷を残すため、クリア塗料で補修します。パネル部の汚れを清掃した後に、1000〜1500番のペーパーで極軽く足付けを行い、クリア塗料を吹き付けました。ここで使用した塗料は「KURE シールコート」という製品です。これは、自動車部品の保護等に使用するもので、強固な皮膜を形成するため傷防止効果が期待できます。